僕にはお気に入りのカバンがある。
茶色のボストンバッグでシンプルだけど、どことなく品のあるデザインが気に入って買ったのだ。
こいつを初めて店で見たときは、直感で「これにしよう!」と思ったのである。
直感というと衝動買いみたいだけど、カバンを探して二時間くらい歩き続け、ようやく見つけたのだから、衝動的であっても、それは二時間探し続けた僕への神様からの贈り物だったに違いない。僕は一目で恋に落ちた気持ちになった。「もう、放さないんだから!」と帰りの電車の中で何度も袋の中のカバンをチラチラ見ては喜んでいた。
ところが、どんな人間関係も、そうであるように積み重ねるごとに印象が変ってしまうことがある。
僕のこのカバン君(ちゃん)は、使い勝手がどうにもあんまり良くないのだ。
カバンの構造上、小さなポケットがついていないのだ。これにより携帯や財布、定期を一度入れると必要なときにいつも奥に入ってしまい見つからないのだ。電車の改札口で足止めをくらうこと多々、着信に出られない(というか気づかない、否、気づけない)ことも多々、コンビニで手間取ることも多々!多々!
多々!我 不見 貴重品!我 超的 不覚、謝々!なのである。
「こんな生活もうイヤ!タケシさん、もう終わりにしましょう!」同居二年目、河川敷の安アパートじゃないけれども、僕は新しいカバンを買ってしまった。格好良い革製のカバンである。ところが、梅雨のせいで
革製品を気軽に持ち運ぶことなど出来ないため、殆ど使えずにいる。考えてみれば、使い勝手が悪くても俺が努力してお前に入れるときは貴重品を小さな袋に入れれば良かったんだよね。ごめんね、茶色のボストン君(ちゃん)・・・。やっぱ君が好きです。でも革のカバンも好きです。夜のキリンさんとゾウさんはもっと好きです。
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